タシロハヤト先生より『覚醒のトラジェディ』発刊に寄せて

皆さんこんにちは、タシロハヤトです。

 今回は、ずっとやりたかったネタを詰め込んだシナリオ「覚醒のトラジェディ」を書かせていただきました……が、結果、バッサバッサと斬り落とされて、半分ぐらいになってしまいました(笑

 プレイ時間、わかりやすさ、時代が求めるプレイ体験といった観点から見ると、とにかく詰め込みすぎである、というのが一番の理由です。それを上手いこと纏めてくれた永田るいすさんには感謝です。ですから私は今回、作者というよりは原作者に近い立ち位置なのかなと思っています。長くて難解な物語がアニメ化されたら短くわかりやすくなった! みたいな心境です。もしも皆さんが本作を楽しんでくださったとしたらそれは、るいすさんの尽力の賜物です。

 これは曲がりなりもシナリオライターを標榜する身として喜んでいる場合じゃないのですが、この反省は次に生かして前向きに行きます! ……とは言え、斬り落とされたものをそのまま闇に葬るのも忍びないので、ネタバレしない程度に何がやりたかったのかをここに書き残しておこうと思います(どこかで使い回すかもしれませんしね!)。

 真偽はさておき、私は江戸の町は神仏の加護を求め結界などを張り巡らしていたと考えています。大河ドラマ「鎌倉殿の13人」を観ても、神仏への畏れがハンパでないことがわかります。江戸時代はそれから400年経ってはいるものの、この間に起きた変化というのはそれらを排除することではなく、より効率的に取り込もうという「洗練」だと考えています。ですから江戸幕府開府に伴い、鬼門封じなどの結界を張ろうという意識は、たとえ験担ぎだったとしても当然あったと思っているのです。ましてや殆どゼロの状態から町を作る、まさに「シムシティ」状態(最近だと「シティーズ・スカイライン」と言った方がいいですかね?)なので、町の造成に意味を持たせようとするのは人間心理的にもあり得る気がするのです。

 そういう立場からすると、関東の英雄である平将門にあやかった江戸の結界というものにはロマンを感じます。そして例えば荒俣宏先生の「帝都物語」や星野之宣先生の「宗像教授」シリーズのように、いろんな事象をそこに関連付け、ひとつの大きな流れを作る遊びをやりたくなるわけですね。これが今回の一番の目的だったのです。

 ですから、当初の原稿では、平安時代から江戸時代、明治維新、そして第二次大戦、バブル崩壊、そして現代と、歴史の裏で連綿と続く秦野勢力と鵺魅乃火群(やみのほむら)との戦いの歴史が描かれており、それらをプレーヤーが紐解くことで謎が解ける流れになっていました。また、それぞれの時に何がどのように起きたか、その後それはどういう影響を与えてどうなったのか、また矛盾した伝承は何故矛盾しているのかなどを掘り下げてもいました。そして更に、それら全てを根底から覆す真相に辿り着いてしまう展開まであって……という内容で、まあ、膨大ですよね(得体の知れない語句が出て来たと思いますが、詳しくはシナリオをご覧いただければと思います)。

 膨大であるが故に「紐解く」と言っても、一度きっかけを掴むと大量の資料が発見されたり、NPCが語り出したりして、プレイヤーはもちろんのこと、キーパーの負担がかなり大きいものとなっていたので、バッサリやられるのも道理というものです。

 あまり語るとネタバレ領域に突っ込んでしまうため今の時点では控えておきますが、私にやりたいことが溢れていたこと、それをストレート剛速球で投げようとしていたことは伝わったかもしれません。仕事とは違う純粋な趣味として散々調べて書いたのは本当に久しぶりで、その楽しさにちょっと思いが暴走してしまいましたね……。

 ではまた機会があれば書かせていただきたいと思っていますので、その際はどうぞよろしくお願いします!

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